
特定技能「自動車運送業」で外国籍人材を雇用する方法をわかりやすく解説
『2024年問題』に象徴されるように、運送業界は人手不足が極めて深刻化しています。このような状況への対応策として、2024年に特定技能1号の対象分野に「自動車運送業」が追加されました。これにより、バス、タクシー、トラックの各分野で外国籍人材の採用が可能となり、人手不足解消の大きな一手として期待されています。
本コラムでは、この新しい在留資格である特定技能「自動車運送業」に焦点を当て、制度の概要、外国籍人材が従事できる具体的な業務内容、企業が厳守すべき採用要件、そして日本の免許を持たない人材を海外から採用する際の流れについて、解説します。制度の詳細を正確に把握し、慎重かつ計画的に採用を進めるための一助として、是非お役立てください。
特定技能「自動車運送業」とは
2024年に追加された特定技能1号の新たな対象分野です。
特定技能制度は、人手不足の特定分野で一定の専門性や技能を持つ外国人材を受け入れる在留資格です。この追加により、企業はバス・タクシー・トラックの運転分野で外国人材を採用できるようになりました。
特定技能「自動車運送業」で可能な業務
特定技能「自動車運送業」分野で外国籍人材が従事できる主な業務は、それぞれ以下の通りです。
どの区分においても、運行管理者等の指導・監督の下で行われ、メインの業務に付随する関連業務(清掃、運賃精算など)に従事することも認められますが、専ら関連業務のみを行うことは認められていません。
バス運送業
(主な業務)
・運行業務…運行前後の車両点検、安全な旅客の輸送、乗務記録の作成など
・接遇業務…乗客対応、乗降時の案内、車内でのサービスなど
・関連業務…車内清掃作業、営業所内清掃作業、運賃精算・管理など
タクシー運送業
(主な業務)
・運行業務…運行前後の車両点検、安全な旅客の輸送(運転)、乗務記録の作成など
・接遇業務…乗客対応(挨拶、道案内、サービス)、運賃の収受など
・関連業務…車内清掃作業、営業所内清掃作業、運賃精算・管理など
トラック運送業
(主な業務)
・運行業務…運行前後の車両点検、安全な貨物の輸送、乗務記録の作成など
・荷役業務…荷崩れを起こさない貨物の積付けなど、積み下ろし作業の一部
・関連業務…車両点検、車内の清掃、営業所内の清掃、燃料補給など
特定技能人材が自動車運送業で従事するための要件
特定技能「自動車運送業」分野の在留資格申請の主な要件は以下の通りです。
「バス運転者」になるための要件
日本語試験 :JLPT N3以上
技能試験 :自動車運送業分野特定技能1号評価試験(バス)
自動車運転免許:第二種運転免許
その他要件 :新任運転者研修の修了
「タクシー運転者」になるための要件
日本語試験 :JLPT N3以上
技能試験 :自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー)
自動車運転免許:第二種運転免許
その他要件 :新任運転者研修の修了
「トラック運転者」になるための要件
日本語試験 :JLPT N4以上、(国際交流基金日本語基礎テスト、技能実習2号の良好修了も可)
技能試験 :自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)
自動車運転免許:第一種運転免許
その他要件 :なし
バス、タクシーについては日本語能力試験(JLPT)N3レベルの合格、トラックについてはN4レベルの合格が必要です。業務内容によって必要なレベルが異なります。
お客様を乗せて運転をするバス、タクシーは第二種免許の取得も必須となります。特定技能外国人は、これら運転業務とそれに付随する業務全般に従事することが可能です。「付随する業務」とは、貴社に雇用されている日本人ドライバーが通常業務として行っている内容(車両点検や清掃、運賃精算など)を指します。
※外国籍人材の日本における運転免許取得については、過去コラムで取り上げています。
企業が自動車運送業で特定技能外国人を採用するための要件
特定技能外国人を受け入れる企業(受入れ機関)は、採用を開始するにあたり、以下の要件を満たす必要があります。
1. 「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入
特定技能外国人を受け入れる企業は、国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」の構成員になることが必須です。
この協議会は、特定技能人材の受け入れ企業をまとめる機関であり、産業分野ごとに存在します。自動車運送業の協議会への入会は、国土交通省のホームページから行うことが可能です。協議会の構成員は、特定技能制度の適正な運用のため、協議会に対して必要な協力を行わなければなりません。
2. 業務区分別に必要な認証を取得すること
バス運送業:
「働きやすい職場認証制度」認証取得
タクシー運送業:
「働きやすい職場認証制度」の認証取得
トラック運送業:
「働きやすい職場認証の取得」または「安全性優良事業所(Gマーク)」の取得
3. 道路運送法に規定する自動車運送事業を経営していること
自動車運送業分野で特定技能外国人を採用するにあたって、受入れ企業は下記の事業を適法に経営している必要があります。
バス運送業:
・一般乗合旅客自動車運送事業
・一般貸切旅客自動車運送事業
・特定旅客自動車運送事業
タクシー運送業:
・一般乗用旅客自動車運送事業
トラック運送業:
・貨物自動車運送事業
・第二種貨物利用運送事業
4. 特定技能外国人1号への支援実施可能な環境であること
特定技能1号外国人を受け入れる企業(受入れ機関)は、当該外国人がその活動を安定的かつ円滑に遂行できるよう、以下の義務があります。
支援計画の作成:
日常生活および社会生活上の支援内容を定めた「支援計画」を作成すること
計画に基づいた支援の実施:
作成した計画に基づき、適切な支援を実施すること
日本の自動車免許を所有していない人材を海外から受け入れる際の流れ
特定技能1号の自動車運送業分野は、運転免許証の取得が必須要件です。そのため、日本の運転免許を持たない外国籍人材を採用する場合、他の分野よりも手続きに時間を要する場合が多いです。
日本の免許を持っていない海外在住の人材を受け入れるには…
日本の運転免許を持たない海外在住の外国籍人材を採用する場合、入国時の在留資格は特定活動55号となります。この特定活動期間中に日本の運転免許を取得し、その後、在留資格を特定技能1号へ切り替えて業務に従事することになります。
免許取得までの期間は区分により定められています。
バス・タクシー運転者区分:
入国から12ヶ月以内に免許取得
トラック運転者区分:
入国から6ヶ月以内に免許取得
具体的な手続きは、下記のようなステップで進められます。
【1】 特定技能人材の採用検討
【2】 人材紹介会社・登録支援機関への相談/打ち合わせ
【3】 オンラインもしくは現地面接の実施
【4】 特定活動55号の在留資格認定証明書交付申請
【5】 特定活動55号として入社し、免許合宿に参加
【6】 特定活動55号から特定技能1号に在留資格変更許可申請
【7】 乗務開始
まとめ
2024年に追加された特定技能「自動車運送業」は、「2024年問題」などで深刻化する人手不足を解消する強力な手段です。この制度により、トラック、バス、タクシー運転者として外国人材の採用が可能になりました。
採用にあたっては、JLPT N3(バス・タクシー)またはN4(トラック)レベルの日本語能力と、第二種免許(バス・タクシー)などの運転免許が必須です。また、企業は「特定技能協議会」への加入や「働きやすい職場認証制度」の認証取得、そして外国人材への支援計画の実施が義務付けられています。
特に日本の免許を持たない人材は、「特定活動55号」で入国後に免許を取得し、特定技能1号へ切り替えるというステップが必要となり、採用プロセスには他の分野よりも時間を要します。
これらの要件や特殊な手続きを理解せず採用を進めると、在留資格や法令上の問題に直結しかねません。制度の詳細を正確に把握し、慎重かつ計画的に採用を進めていきましょう。
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