
『育成就労制度』徹底解説~技能実習制度との違い、メリットやデメリット~
外国籍人材の積極的な雇用は、日本国内の深刻な人手不足を解決するための主要な戦略となりつつあります。こうした中、「育成就労制度」は現行の「技能実習制度」に代わり、外国籍人材の受け入れの質を大きく向上させる新しい制度として注目されています。
本コラムでは、育成就労制度の基本的な概要を解説するとともに、他の在留資格との違いや企業が留意すべき注意点について、詳しく説明していきます。
育成就労制度とは
育成就労制度は、現行の技能実習制度に代わり、外国籍人材の受け入れを大きく変革する新しい在留資格・制度です。特定産業分野において、外国籍人材を労働者として受け入れ、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材へと育成し、同時に人材を確保することを目的としています。
最大の変更点は、制度の目的です。従来の技能実習制度が「国際貢献」を名目とした技能移転を目的としていたのに対し、育成就労制度は特定技能への移行を見据えた「人材の育成・確保」を明確な目的としています。この制度で入国した外国人は、3年間の就労後、特定技能1号へスムーズに移行し、日本での長期的なキャリア形成を目指すことが想定されています。
※特定技能と技能実習の概要については、過去掲載コラムで解説しております。
育成就労制度が導入される背景
育成就労制度が創設された背景には、従来の技能実習制度が抱えていた構造的な問題があります。
技能実習制度は「開発途上国への技能移転による国際貢献」を目的としていましたが、実態としては低賃金で働く「労働力」として運用されるケースが多く、制度の目的と実態の乖離が問題視されていました。
この歪みを是正し、制度の目的と実態を合致させるために、抜本的な見直しが図られました。育成就労制度は、「人材の育成」と「産業分野での人材確保」を明確な目的とし、特定技能制度への円滑な移行を可能にすることで、外国籍人材に日本での長期的なキャリアパスを提供します。これにより、人権に配慮した健全な環境を整え、持続可能な外国籍人材の受け入れを実現することが目的とされています。
施行時期について
2025年10月現在時点で、育成就労制度を創設する法律(育成就労法)はすでに成立していますが、制度の具体的な施行時期はまだ正式に確定していません。
しかし、政府は2027年頃の導入を目指しており、現行の技能実習制度から円滑に移行できるよう、両制度が並行して運用される期間が設けられる見込みです。具体的な施行日や詳細については、今後、主務省令などで順次決定・公表されます。
対象分野
育成就労制度の受け入れ対象となる「育成就労産業分野」は、おおむね特定技能制度の受け入れ分野である「特定産業分野」と整合しています。
これは、育成就労が特定技能1号への移行を前提としているためです。現在、育成就労の対象となっている分野は下記の通り、特定技能の既存分野(16分野)を基本としていますが、制度の柔軟な運用を見据え、今後も拡大していく可能性があります。
【特定技能の既存分野(16分野)】

育成就労制度と技能実習制度の違い
育成就労制度は、その先のキャリアパスである特定技能への接続を強く意識した制度設計であり、従来の技能実習制度とは、目的、労働者としての権利、そしてキャリアパスの点で大きく異なります。
その中でも重要な変更点は、「外国人が労働者としての権利を強く持つ点」と「一定の条件のもとで転籍の自由が認められる点」です。
【比較表】

企業にとってのメリットとデメリット
メリット
長期雇用の実現
特定技能への移行が明確化されるため、長期雇用が可能となり、優秀な人材の安定的かつ持続的な定着が図りやすくなります。
高い日本語能力の人材確保
導入時に日本語能力要件が設定されるため、入社時点でのコミュニケーション能力が担保され、企業側の日本語教育の負担が軽減されるでしょう。
デメリット
人材流出のリスク
一定期間後の転籍が可能になるため、待遇の良し悪しなどを背景にして、優秀な人材が他の企業へ流出するリスクが高まります。
費用負担の増加
外国人の人権保護のため、渡航費や送出し機関への手数料の一部または全部を企業側が負担する仕組みが導入される可能性があり、初期採用コストが増加する懸念があります。
まとめ
育成就労制度は、目的を「技能移転」から「人材の確保と育成」へと大きく転換する、外国籍人材受け入れの新しい仕組みです。
本制度は、従来の技能実習制度が抱えていた人権保護の課題を是正し、特定技能へのスムーズな移行を前提とすることで、外国籍人材に転籍の自由や明確なキャリアパス(特定技能2号、永住)を提供し、労働者としての権利を大幅に強化します。
企業にとっては、高い日本語能力を持つ人材を長期かつ安定的に雇用できるというメリットがある反面、採用コストの増加や、労働環境・待遇を改善しなければ人材流出のリスクが高まるという課題に直面します。
しかし、この変化は、企業が持続可能な人材戦略を構築するための好機です。企業はこの新制度の目的とルールを深く理解し、外国籍人材が安心して長く働ける環境整備を進めることが、人材確保の鍵となります。
外国籍人材が活躍できる環境を整えることは、もはや社会的な要請です。この育成就労制度を積極的に活用し、日本の未来を支える優秀な人材を育成・確保していきましょう。
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