
外国籍介護人材が戦力化しない施設の共通点とは?|見直すべき5つの課題
特定技能をはじめ、外国籍介護人材の採用は多くの介護施設で進んでいます。しかし、「採用できたのに思ったように戦力化しない」「教育負担ばかり増えてしまった」と悩む施設も少なくありません。
実は、その原因は本人の能力や日本語力だけにあるとは限りません。戦力化が進まない施設には、共通する課題があります。
本記事では、外国籍介護人材が期待通りに戦力化しない施設に共通する5つの課題と、早期戦力化を実現するためのポイントについて解説します。
【この記事でわかること】
✅戦力化が進まない施設に共通する5つの課題
✅教育・定着を成功させる仕組みづくりの考え方
✅外国籍介護人材の活躍を促す改善ポイント
外国籍介護人材が期待通り戦力化しない、その実態
―――採用から3カ月経っても、期待していたほどの戦力になってない。
こうした悩みを抱える介護施設は、決して珍しくないでしょう。
特定技能「介護」の試験に合格していたとしても、実際に現場で働き始めると想定とのギャップが生じるケースは少なくありません。指示された業務はこなせても、その背景や目的まで十分に理解できていなかったり、同じ場面で繰り返しつまずいてしまったりすることがあります。こうした課題が積み重なることで、なかなか戦力化が進まず、結果として早期離職につながるケースも見られます。
問題は、必ずしも本人の能力や意欲だけにあるわけではありません。採用時点の見立てと、実際の現場で求められる実務対応力との間にギャップが生じていることが少なくないのです。試験に合格していても、介護現場特有の業務フローや暗黙知、利用者との関わり方まで理解しているとは限りません。また、日本語の読み書きができても、現場で飛び交う指示や申し送りを十分に理解できるとは限らないのが実情です。
その結果、本来であれば2~3カ月で独り立ちできる業務に半年以上かかったり、十分な戦力になるまでに1年以上を要したりすることもあります。その間、現場スタッフの教育負担は増え、施設側が期待していた採用効果も得られにくくなります。
こうした状況は、外国籍人材特有の問題ではありません。しかし、日本語や文化、介護経験の違いがある分、受け入れ後の育成設計がより重要になります。にもかかわらず、多くの施設では採用活動に注力する一方で、入職後の教育体制や育成ステップの整備までは十分に手が回っていないのが現実です。その結果、教育が担当者任せになり、戦力化までの道筋が曖昧になってしまうのです。
【1】採用がゴールになっている
採用が決まった時点で、多くの施設は一仕事終えたように感じます。しかし、ここに大きな落とし穴があります。採用はゴールではなく、人材育成のスタートラインです。
ところが実際には、入職後の育成計画や教育ステップが十分に設計されていないまま受け入れが始まるケースも少なくありません。「1カ月後には何ができる状態を目指すのか」「3カ月後にはどの業務を任せるのか」といった具体的な目標が定まっていないためです。
その結果、本人は「何を、どこまでできるようになればよいのか」が分からないまま現場に入り、受け入れ側も明確な期待値を持たないまま日々の指導を行うことになります。これでは本人の成長を適切に測定できず、指導する側も手応えを感じにくくなります。
結果として、教育は場当たり的になり、戦力化までの期間が長期化します。施設側の満足度が上がらないだけでなく、本人にとっても達成感を得にくくなり、早期離職のリスクを高める要因にもなりかねません。
採用時に「戦力化の設計」がないと何が起きるか
戦力化の設計がないまま採用を進めると、さまざまな悪循環が生まれます。
まず、来日後の配置や育成方針が明確になっていないケースです。本人は何を優先的に学ぶべきか分からず、施設側も「どの業務から任せ、どの順番で育成するか」という計画を持たないまま指導を始めることになります。その結果、教育は日々の業務状況に左右されやすくなり、育成の一貫性を保ちにくくなります。
また、教育目標が曖昧なままでは、本人も施設側も成長を実感しにくくなります。本来であればできるようになっていることも評価されず、本人は「何を目指せばよいのか分からない」、施設側は「思ったより成長が遅い」と感じるなど、双方に認識のズレが生じやすくなります。
採用時に戦力化のシナリオを設計するとは、来日後1カ月、3カ月、6カ月といった節目ごとに、習得すべき業務や求める水準を明確にしておくことです。あらかじめ成長の道筋を描いておくことで、教育が場当たり的になることを防ぎ、本人の成長も可視化しやすくなります。その結果、戦力化までのスピードを高めることにもつながります。
【2】教育が「仕組み」ではなく「人」に依存している
採用後の教育体制を見直してみると、多くの施設で共通する課題が見えてきます。それは、教育が「仕組み」ではなく「人」に依存していることです。
現場では、経験豊富な中核の日本人スタッフが、外国籍人材の指導を担うケースが少なくありません。しかし、教育内容や育成手順が標準化されていない場合、指導の質は担当者の経験や裁量に大きく左右されます。その結果、教育成果にばらつきが生じるだけでなく、指導する側の負担も増していきます。
現場スタッフの裁量や相性で教育が左右される理由
外国籍人材を受け入れた施設では、現場の経験豊富なスタッフに教育を任せることが一般的です。ところが、「指導担当者」としての役割や育成方針が明確になっていない場合、さまざまな課題が生じます。
まず、現場スタッフは通常業務と教育を並行して行うため、忙しい日には教育が後回しになりがちです。また、指導する側にとっては当たり前の業務内容でも、外国籍人材にとっては初めて接する考え方や慣習であることも少なくありません。そのため、「伝えたつもり」と「理解したつもり」の間に認識のズレが生じます。
さらに、教育手法が担当者任せになっていると、指導者との相性によって教育効果に差が生じることがあります。本来、教育の質は個人の力量や相性に左右されるべきものではありません。だからこそ、誰が担当しても一定の水準で育成できる仕組みづくりが求められるのです。
属人化した教育を抜け出すために
属人化した教育から脱却するには、教育を「仕組み」として設計し直す必要があります。
一つ目は、教育内容を標準化することです。各業務について、「最初の1週間で学ぶこと」「1カ月後までに習得すること」といった段階的な教育プログラムを文書化します。
二つ目は、教育担当者の役割を明確にすることです。「教育を担当する」という役割を正式な業務の一つとして位置付け、通常業務と同等の重要性を持たせることが重要です。
三つ目は、進捗を定期的に確認する仕組みをつくることです。月1回程度の面談を実施し、「この1カ月で何ができるようになったか」を振り返ることで、本人の成長を可視化できます。
また、こうした教育の仕組みづくりとあわせて重要なのが、採用段階で一定水準の知識や技能を持った人材を確保することです。
特に、来日前に日本語教育や介護教育を受けている人材は、来日後の理解が早く、現場での教育負担を軽減しやすい傾向があります。介護の基本的な考え方や業務の目的を理解したうえで入職するため、「なぜそうするのか」という背景まで含めて理解しやすく、教育の属人化リスクを抑えることにもつながります。
【3】期待値(ゴール定義)が曖昧
外国籍人材の育成が思うように進まない施設では、「いつまでに、何ができるようになればよいのか」というゴールが明確に定義されていないケースが少なくありません。ゴールが曖昧なままでは、教育の進捗を適切に評価できず、本人も施設側も成長を実感しにくくなります。
いつまでに何ができればいいのか、ゴール定義の欠落
外国籍人材を採用する際、多くの施設は「介護職として一人で業務ができるようになること」を目標に掲げます。しかし、「一人で業務ができる状態」が具体的に何を指すのかは施設によって異なります。
例えば、基本的な身体介護ができる状態を指すのか、夜勤まで対応できる状態を指すのか、あるいは利用者とのコミュニケーションや記録業務まで含めるのかによって、求められる水準は大きく変わります。
こうしたゴールが明確でないまま教育を進めると、指導者ごとに期待値が異なり、評価基準にもばらつきが生じます。その結果、本人は何を優先的に習得すればよいのか分からず、施設側も成長度合いを客観的に判断できなくなります。
さらに問題なのは、進捗を可視化できないことです。「成長が遅い」「なかなか任せられない」といった評価が感覚的なものになりやすく、実際に何ができていて、何が課題なのかが整理されません。
ゴール定義の欠落は、本人のモチベーションにも影響します。「何を達成すれば認められるのか」「次のステップに進めるのか」が見えなければ、成長の実感を得ることは難しくなります。その結果、将来の見通しを持てず、早期離職につながる可能性もあります。
【4】日本語力だけに原因を求めている
採用後に成長が伸び悩む外国籍人材を前にして、「日本語力がまだ十分ではないから」と考える施設は少なくありません。しかし実際には、日本語力だけが課題とは限りません。仕事の流れや業務の背景が十分に共有されていなければ、たとえ言葉が通じても正しく理解することは難しいからです。
実は「仕事理解」と「業務構造」が曖昧だから伝わらない
現場で指示を出した際に、期待した通りの対応ができない場面があります。そのようなとき、「日本語が理解できていないのではないか」と考えがちですが、実際には言葉そのものではなく、業務の背景が理解できていないケースも少なくありません。
例えば、排泄介助の後に「トイレの便座を消毒してください」と指示した場合を考えてみましょう。「消毒」という言葉の意味は理解していても、なぜその作業が必要なのか、感染症予防という施設全体の方針とどう関係しているのかまで理解できていなければ、その指示は単なる作業指示として受け取られてしまいます。
日本の介護現場では、感染症対策や転倒防止、利用者の尊厳の保持といった基本原則に基づいて業務が組み立てられています。こうした原則を理解していれば、個別の指示がなくても「この場面では何を優先すべきか」を自ら判断しやすくなります。
そのため、戦力化を進めるうえでは、日本語力だけでなく、介護業務の流れや考え方を理解していることも重要です。
【5】過度な配慮が成長を阻害している
外国籍人材を受け入れた施設では、無意識のうちに過度な配慮をしてしまうことがあります。言葉の壁や経験不足への不安から、複雑な業務や判断を伴う仕事を任せることを避けてしまうのです。
もちろん、利用者の安全を守るための配慮は欠かせません。しかし、必要以上に業務範囲を限定してしまうと、結果として本人の成長機会を狭めてしまうことがあります。
ミスをさせないために低い負荷ばかり与える弊害
施設側が外国籍人材に比較的負荷の低い業務を任せるのは、ミスやトラブルを防ぎたいという思いからです。しかし、その状態が長く続くと、本人の成長機会を損なう可能性があります。
毎日同じような業務ばかりを担当していれば、新しい知識や技術を身に付ける機会は限られます。また、本人にとっては「重要な仕事を任せてもらえない」「期待されていない」と感じる要因にもなりかねません。
その結果、「この職場では成長できない」という意識が生まれ、仕事への意欲が低下する場合もあります。特に若い外国籍人材の中には、日本で介護技術や専門知識を身に付けたいという目的を持って来日している人も少なくありません。
責任を持たせないことが、本当の戦力化を遠ざける
過度な配慮は、「責任のある役割を任せない」という形でも表れます。
判断を伴う業務や利用者対応を避け、常に指示を受けて動く立場に置いてしまうと、自ら考え行動する力を育てる機会が失われます。もちろん、いきなり大きな責任を任せる必要はありません。しかし、成長段階に応じて少しずつ役割や責任の範囲を広げていくことは、戦力化を進めるうえで重要です。
見直すべき2つの観点|採用から配置、その後まで
採用時点での判断や準備は、その後の戦力化スピードを大きく左右します。ここでは、多くの施設が見直すべき2つのポイントを整理します。
(A)採用時に「戦力化までのシナリオ」を設計する
戦力化のシナリオとは、来日後6カ月、1年後といった節目ごとに、「この時点ではこの業務を担当できる状態を目指す」という目標を設定することです。
来日前の段階から「1年後にはこうした介護職として活躍してほしい」という期待を共有することで、施設側と本人の認識が一致し、成長に向けた取り組みも進めやすくなります。
(B)教育を「人」から「仕組み」に移行する
現場スタッフの経験や相性に頼った教育では、人材ごとに成長速度や習得内容に差が生じやすくなります。
属人化した教育から脱却するためには、教育内容や手順を明文化し、誰が担当しても一定の水準で指導できる仕組みを整えることが重要です。
具体的には、業務ごとに「教える順序」「確認項目」「習得基準」を定め、教育の進捗を記録・共有できる体制を構築します。こうした仕組みがあれば、教育負担の分散にもつながり、本人も成長の道筋を理解しやすくなります。
まとめ|戦力化を早めるために、今すぐ見直せること
ここまで見てきたように、外国籍介護人材が期待通りに戦力化しない背景には、採用がゴールになっていることや、教育が仕組み化されていないこと、そして期待値が明確に共有されていないことなど、受け入れ側の構造的な課題があります。
しかし、見方を変えれば、これらは施設側の取り組み次第で改善できる課題でもあります。採用時に戦力化までのシナリオを描くこと、教育を属人化させず仕組みとして運用すること。この2つを見直すだけでも、戦力化のスピードは大きく変わります。
人手不足が続く中、外国籍人材の定着と活躍は、もはや採用担当者だけの課題ではなく施設経営に直結するテーマです。だからこそ、「採用できるか」ではなく、「採用後にどう戦力化するか」という視点が欠かせません。
人材確保や定着が課題となる中、改めて自施設の採用・教育・配置の流れを見直してみることも大切です。その積み重ねが、人材の定着と介護サービスの質向上につながっていくでしょう。
当社では、来日前から日本語教育や介護教育を受け、日本人介護福祉士による指導を受けた外国籍人材をご紹介しています。採用後の早期戦力化を重視する施設様に向けて、人材紹介だけでなく受け入れ後の定着・育成まで見据えたサポートを行っています。
外国籍介護人材の採用や受け入れ体制の見直しをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

KosaidoGlobalの教育
×
日本人介護福祉士
KosaidoGlobalがご紹介する介護人材は、来日前に現地在住の日本人介護福祉士から介護業務に関する教育を受けています。介護業界の『やりがい』や『厳しさ』を教えることで、来日後のギャップをなくし、人材の長期定着を図ります。

