
【特定技能1号】外食分野で上限到達 分野別受入状況と企業が今後、取るべき対応
近年、深刻化する人手不足は、多くの企業において重要な経営課題となっています。その対応策として、外国籍人材の活用が進んでいます。
その中でも「特定技能制度」は、即戦力人材を確保できる手段として導入が進んでいますが、制度運用において注目すべき動きが見られました。
それが、2026年3月に出入国在留管理庁から発表された外食業分野の受入れ上限到達による新規受入れ停止です。
本稿では、この事例を踏まえ、分野別の受入れ上限と充足状況を整理するとともに、今後の外国籍人材の採用における留意点を解説します。
外食分野における受入れ停止の背景
特定技能制度では、「特定技能1号」に限り、分野ごとに一定期間の受入れ上限(受入れ見込み数)が設定されています。(※特定技能2号には受入れ上限はありません)
外食分野では、令和11年(2029年)3月までの受入れ上限が約5万人とされていましたが、2026年3月27日に出入国在留管理庁は、2026年5月頃に受入れ上限5万人を超えることが見込まれることを発表しました。
【外食分野における特定技能人材の推移】
・2024年12月末時点 :27,864人
・2025年6月末時点 :36,281人
・2025年12月末時点 :44,925人
・2026年2月末時点 :約46,000人 ※2026年3月27日発表の速報値
・2026年5月頃 :50,000人到達 ※見込み
この事例が示すのは、特定技能1号による採用は無制限ではなく、「上限枠」によって採用可能なタイミングが制約されるという制度的な現実です。
(出典)出入国在留管理庁│特定技能制度運用状況(令和7年12月末時点)
(出典)出入国在留管理庁│特定技能「外食業分野」における受入れ上限の運用について
外食分野の上限は今後、緩和されるのか
出入国在留管理庁は、今回の運用を「一時的な停止措置」としており、上限緩和の可能性はゼロではありません。ただし、具体的な再開時期などは明らかにされていません。
なお、現行の受入れ見込み数は2029年3月までの枠組みであるため、実質的な大きな見直しは2029年頃の次期計画で行われる可能性が考えられます。
したがって、企業としては「いずれ再開される可能性がある」という前提ではなく、当面は採用制約が継続することを前提に人材戦略を組み立てることが重要です。
なぜ、受入れ上限が設けられているのか
分野ごとに受入れ上限が設定されている背景には、主に以下の目的があります。
1. 国内労働市場への影響管理
外国籍人材の流入が過度になると、賃金や雇用環境に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、受入れ規模を適切にコントロールする仕組みが設けられています。
2. 分野ごとの需要との整合
分野ごとに人手不足の状況や将来見通しが異なるため、実態に応じた上限設定が行われています。
※(補足)受入れ上限は固定ではなく「見直される」
なお、特定技能1号の受入れ見込数は一度設定された後も固定されるものではなく、経済状況や人手不足の深刻度などを踏まえ、一定期間ごとに見直しが行われます。
現在では令和11年(2029年)3月までの受入れ上限が定められています。
分野別の受入れ状況

各分野の充足状況は上記のとおりです。このように、分野ごとに充足率には大きな差があります。
分野間で差が生まれる理由
充足状況の違いには、次のような要因が影響しています。
◎人材需要の強さ
◎労働条件・待遇
◎必要な技能・日本語能力
◎各国での人気・認知度
これらが複合的に作用し、採用難易度や充足速度の差につながっています。
今後、想定されるリスク
今回の外食分野のケースは、他分野でも例外ではありません。充足率の高い分野では、今後同様に「突然採用できなくなる」リスクが存在します。
そのため、「まだ余裕がある分野だから大丈夫」という判断は、もはや安全とはいえません。
他に受入れ停止の可能性がある分野は?

特に、以下の分野は今後の動向に注意が必要です。
1. 飲食料品製造業 ⇒ 2027年秋~2028年初頭?
飲食料品製造業は、特定技能制度において受入れ枠が133,500人に設定されている分野です。2025年12月末時点で93,393人を受け入れており、充足率は約70%に達しています。
《直近1年半の増加数》
・2024年6月末⇒12月末 :4,352人
・2024年12月末⇒2025年6月末:10,354人
・2025年6月末⇒12月末 :10,752人
直近では増加数が高水準で推移していることを踏まえると、2027年秋~2028年初頭の間に上限へ到達する可能性があると言えるでしょう。
2. 建設分野 ⇒ 2027年末~2028年初頭?
建設分野は、受入れ枠が76,000人に設定されています。2025年12月末時点での受入れ数は49,323人と、充足率は約65%となっています。
《直近1年半の増加数》
・2024年6月末⇒12月末 :6,659人
・2024年12月末⇒2025年6月末:5,582人
・2025年6月末⇒12月末 :6,962人
建設分野はインフラ維持や再開発需要を背景に、慢性的な人手不足が続いています。直近の増加ペースは比較的安定しており、この傾向を前提とすると、2027年末から2028年初頭にかけて上限に到達する可能性が高いと考えられます。
3.介護分野 ⇒ 2028年前半?
介護分野は、受入れ枠が126,900人に設定されており、2025年12月末時点での受入れ数は67,871人と、充足率は約53%となっています。
《直近1年半の増加数》
・2024年6月末⇒12月末 :7,648人
・2024年12月末⇒2025年6月末:10,549人
・2025年6月末⇒12月末 :12,955人
直近では増加ペースが加速傾向にあり、今後も需要の拡大が見込まれます。こうした動きを踏まえると、2028年前半頃には上限に達するでしょう。
このように見ると、外食分野に続き、飲食料品製造業など複数分野で2027年から2028年にかけて採用制約が顕在化する可能性が示唆されます。
(出典)出入国在留管理庁│特定技能制度運用状況(令和7年12月末時点)
これからの外国籍人材採用に求められること
これまで多くの企業は、「人手不足になってから採用を検討する」というスタンスでした。しかし現在は、「採用できるうちに確保する」という発想への転換が不可欠です。
さらに重要なのは、「採用=ゴール」ではなく、「定着・戦力化までを含めた設計」が求められる点です。制度上の制約が強まる中で、単に人数を確保するだけでは、安定した人材基盤は構築できません。
具体的には、以下の視点が重要になります。
1. 採用の前倒し・計画化
受入れ上限の存在により、「必要なときに採用できる」という前提は崩れつつあります。
したがって、
◎中長期の人員計画に外国籍人材を組み込む
◎余力のあるタイミングで先行採用を行う
といった「前倒し型の採用戦略」が必要です。
2. 定着を見据えた受入れ体制の構築
採用後の早期離職は、再採用が難しい環境では大きな経営リスクです。
そのため、以下のような定着施策が不可欠になります。
◎入社時のオンボーディング(業務・生活両面の支援)
◎日本語学習支援や業務理解のフォロー
◎相談窓口の設置やメンタルサポート
◎同僚・上司への異文化理解の教育
「受け入れる準備ができている企業」ほど、結果的に採用成功率も高まる傾向があります。
3. “働き続けたい職場”づくり
外国籍人材にとっても、職場選択の基準は年々厳しくなっています。
単に就労できるだけでなく、
◎適正な労働条件・待遇
◎キャリアパスの明確化
◎評価の透明性
◎安心して生活できる環境(住居・生活支援など)
といった要素が定着率を大きく左右します。外国籍人材から「選ばれる企業になる」ことが重要です。
今後は、「採用できるかどうか」だけでなく、「定着し、戦力化できるか」まで含めた設計が、企業間の大きな差となります。
外国籍人材の活用は、単なる人手不足対策から、人材戦略そのものへと位置づけが変わりつつあります。制度理解とタイミングに加え、「定着・育成」の視点を持つことが、持続的な人材確保の鍵となるでしょう。
まとめ
外食分野の事例から、以下の点が明確になりました。
◎分野ごとに受入れ上限が存在する
◎充足スピードには大きな差がある
◎上限到達により採用が停止される
つまり、外国籍人材の採用は、「制度理解×タイミング」が成功を左右する戦略領域へと変化しています。自社の属する分野の現状を正確に把握し、適切なタイミングで動くことが、安定的な人材確保の鍵となります。
外国籍人材の採用をご検討中の企業様へ
特定技能制度は、分野ごと・時期ごとに状況が大きく変化します。
◎自社分野はまだ採用できるのか
◎今動くべきか、それとも待つべきか
こうした判断には、最新情報と実務知見が不可欠です。当社では、分野別の受入れ状況や市場動向を踏まえた実務ベースの採用戦略設計をご支援しています。
無料相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

