
2025年11月19日(水)に開催した【宿泊業界向け 『特定技能』と『技人国』攻略 完全解説セミナー】。外国籍人材の雇用に関する法務・労務の第一人者である弁護士の杉田昌平氏をお招きし、宿泊業における「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能1号」の在留資格ごとの就労範囲と特徴を、弁護士の視点から詳細に解説いただきました。また、質疑応答についてもご対応いただいております。
本レポートでは、セミナーの内容を抜粋してご紹介します。
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弁護士法人Global HR Strategy
代表弁護士 杉田 昌平 氏
慶應義塾大学大学院法務研究科特任講師、名古屋大学大学院法学研究科日本法研究教育センター(ベトナム)特任講師、ハノイ法科大学客員研究員、法律事務所勤務等を経て、現在、弁護士法人Global HR Strategy 代表社員弁護士、独立行政法人国際協力機構国際協力専門員(外国人雇用/労働関係法令及び出入国管理関係法令)、慶應義塾大学大学院法務研究科・グローバル法研究所研究員

株式会社広済堂ビジネスサポート
グローバルサービス部 菅井 学 氏
大学卒業後、廣済堂に入社し約20年、人材サービス領域で採用支援に従事。求人メディア、採用HP、ATS、BPO/RPOなど、集客から運用改善まで幅広く経験。また人材紹介部門では、RA・CA両面型のコンサルタント兼プレイングマネージャーとして、高い入社決定率で外部評価を得るなど、提案力と関係構築力を強みに成果を上げた。現在はグローバルサービス部で外国籍人材の紹介事業を推進している。

「忙しくて全部読むのは大変…」という方に向けて、本セミナーの重要なポイントをまとめました。是非、こちらをお読みください。
宿泊業の人材不足解消に不可欠な「技術・人文知識・国際業務(技人国)」と「特定技能1号」について、弁護士の視点から、その就労可能な範囲(境界線)と特徴が詳細に解説されました。
外国人就労者数の急増: 2024年末時点で日本に在留する外国籍人材は376万人、そのうち就労者は230万人に上ります。これは日本全体の派遣労働者数(212万人)を上回る規模です。
増加ペース: コロナ禍後の直近3年間(2021年〜2024年)で在留外国人は100万人増加しており、これは石川県や大分県などの人口規模に匹敵します。国内人材の採用難を背景に、外国人雇用へのニーズが急速に高まっています。
宿泊業の課題: インバウンド需要の増加が確実な宿泊業にとって、ホテルの稼働率を上げるためには、外国人雇用の促進が喫緊の課題となっています。
2023年8月に入管庁から公表された指針に基づき、「技人国」と「特定技能」の宿泊業での就労範囲が明確に線引きされました。
就労範囲:
・フロント業務と企画・広報業務の2つのみが、主たる業務として可能です。その他の業務は原則不可
・接客業務、レストランサービス業務、備品点検交換などの単純労働的な業務を恒常的に行うと不法就労となります
例外規定:
OJT(研修計画に基づく実務研修)または突発的・緊急な対応の場合のみ、例外的に非該当業務への従事が許容されます。ただし、OJT終了後は技人国該当業務に100%従事することが前提です。
資格要件:
大学等で学習した内容と仕事の関連性が必要です。専門学校卒業者や実務経験者にも適用要件がありますが、技能実習・特定技能の経験は「10年の実務経験」に含めないと解釈が変更されました。
雇用形態:
在留期間に上限がないため、正社員(無期雇用)での採用に問題はありません。
就労範囲:
・フロント、企画・広報、接客、レストランサービス、備品点検交換など、宿泊業分野で定められたすべての業務が可能です。
・もっぱら客室清掃などの関連業務のみに従事することはできませんが、主たる業務の範囲内であれば幅広く従事することが可能です。
受入要件:
特定技能雇用契約の締結と1号特定技能外国人支援の実施が義務付けられます。支援は自社または登録支援機関への委託が可能です。
制度上の注意:
雇用契約上、日本人と同等以上の報酬・待遇が必須です。また、非自発的離職者(普通解雇など)を発生させた場合、1年間の受け入れ停止などの厳しい罰則が適用されます。
雇用形態:
在留期間は通算5年ですが、特定技能2号を取得すれば無期雇用は可能です。
セミナーでは、参加者から寄せられた具体的な質問について、杉田弁護士にご解答いただきました。
(一部抜粋)
技人国人材の送迎業務について:
Q.技人国の外国人スタッフが、お客様の送迎(車の運転)を担当してもいいですか?
A.恒常的・日常的に役割として行うのは在留資格外であり不可。OJT期間中や、フロント業務中に急遽対応する突発的な場合に限り許容されます。


杉田氏:
まず初めに、外国人雇用の状況から見ていきます。
2024年 12月末時点で日本に住んでいる外国籍の方は376万人です。そのうち、230万人が働いているという状態です。
一方で、日本全体の派遣労働者の数は212万人です。つまり、派遣形態で働いている労働者の数よりも、外国籍人材の労働者数が多くなっています。
また、注目いただきたいのは、その増加数です。
2023年末から2024年末までの一年間で、日本に住む外国人は341万人から376万人と35万人増加しています。
さらに、コロナ後の直近3年間を見てみると、日本に住む外国人は100万人増加しています。2006年から2024年までの18年間で増加した総数は168万人ですから、そのうちの100万人が直近3年の増加なのです。このデータから、直近3年間の受け入れペースがいかに早いかお分かりいただけるかと思います。
この背景には、国内における日本人の採用が2022年くらいから非常に難しくなってきたことが推察されます。人口減少社会になり、外国人雇用のニーズが急速に高まっている状態だと言えます。
なお、3年間で100万人も増加したということですが、これは石川県や山形県、富山県といったひとつの県、または仙台市や千葉市のような政令指定都市の人口規模とほぼ同じ数です。
宿泊業界においては、インバウンドにより海外からの観光客が増えることは疑いの余地がないと考えられています。そうなると、ホテルの稼働率を維持・向上させるためには、働く人を増やさなければなりません。業界として、どうやって採用を進めていくか、という状況にあるのではないでしょうか。

杉田氏:
今年の8月に入管庁より、宿泊業における在留資格別に担当可能な業務を明確にした表が公表されました。
フロント業務や企画・広報業務は、技人国と特定技能1号の両方で担当することができます。
しかし、接客業務やレストランサービス業務などについては、技人国は担当できません。ただ、注意書きがあって、OJTの一環や急を要する場合は、技人国でも対応することが認められています。
このように、明確に線引きされました。
技人国のポイントは、「大学や高等教育機関で学習した内容と仕事の内容に専門的な関連性が必要となる」ことです。
注意が必要なのは、「仕事の内容」と「本人の学習履歴」は、別問題ということです。
仕事の内容が、大学等で習う知識を使う仕事からはみ出てしまうのではあれば、それは不法就労です。一方、仕事の内容が大学等で習う知識を使う仕事であっても、本人が学んでいなければ、在留資格は取得できません。ただ、不法就労ではありません。

杉田氏:
ただ、表で「×」と記された業務を担当することができる、例外があります。OJTの場合と、急な対応の場合です。
OJTの場合は、日本人の大卒にも行うOJTであることや、在留期間の大半を占めるようなものではないこと、1年を超える場合は研修計画を提出すること、などが条件です。急な対応の場合は、たとえばフロント業務に従事している最中に、急に多くの宿泊客のチェックインがあって荷物を運ばなければならないとき、などが該当します。
次に、技人国の要件について、お話します。
まず、【技術】【人文知識】に関して。「大学を卒業する」「専修学校の専門課程を修了する」「10年間の実務経験がある」このいずれかに加えて、「報酬が日本人と同等以上であること」が求められます。あくまで仕事内容が同じ日本人と同等以上なので、技人国の方が契約社員の方と同じ仕事をするのであれば、契約社員の方に合わせた報酬で問題ありません。
次に【国際業務】ですが、こちらは学歴の制限はありません。3年の業務経験は必要ですが、こちらも大卒者が翻訳・通訳として従事する場合は不要です。

杉田氏:
注意が必要なのは、【技術】【人文知識】における「10年間の実務経験がある」という条件について、です。
これまでは、「在留資格に限らず、業界経験が実務経験である」という解釈が一般的でした。しかし、入管が先月公表したものによれば、技能実習や特定技能といった在留資格での経験は含まない、ということが明記されました。
技人国は非常に分かりやすい在留資格なので、使い勝手がいいわけですが、使い勝手がいいために本来は対象じゃない業務を担当するケースも多かった、と言えます。
杉田氏:
特定技能は新しい在留資格なので、仕事の内容や要件、手続きなどが厳格です。
特定技能1号を採用する上で、受入れ企業にはふたつの義務があります。「特定技能雇用契約」という入管法が定めた特殊な雇用契約を結ぶこと、もうひとつは「一号特定外国人支援」という生活支援を行うことです。支援については、自社でやってもいいですし、登録支援機関に委託しても構いません。

杉田氏:
宿泊業において受入れ企業になるためには、業界特有の条件がいくつかありますが、そこまで大きな支障になるものはないかと思われます。
ただ一点、宿泊業界において課題に感じることはあります。それは、ホテルの物件を所有するオーナー企業とホテルのオペレーションを行う運営企業が異なるケースに発生します。特定技能人材を雇用できるのは、あくまで「旅館・ホテル営業の許可を受けている」企業です。そのため、物件のオーナー会社が営業の許可を持っている場合は、ホテルのオペレーションを行う運営企業で特定技能人材を雇うことができません。
また、人材側については、業界特有の条件はありません。
特定技能1号は、かなり広範囲な仕事を担当することができます。
主たる業務について、各業務の比重にバラつきがあっても問題はありません。関連業務については、もっぱらそれだけに従事することはできません。ただ、幅広い業務を担当できるといっても、日本語能力試験 JLPTがN4の特定技能人材に対して、フロント業務や企画・広報業務のニーズがどの程度あるのか。制度と実際の現場に乖離はあると言えるかもしれません。
「特定技能雇用契約」の内容について、お話します。契約の内容として定めなければならないことは、「差別をしないこと」です。報酬や労働時間に関して、外国人であることを理由に差別をしないことなどが挙げられます。
少し注意が必要なのは、「有給休暇」に関してです。外国人が一時国を希望した際に必要な有給休暇を取得させること、とあります。これは、有給休暇の日数がない場合に追加で付与しなければならない、ということではありません。外国人が旧正月などに一時帰国を希望した場合、事業に支障をきたすような場合でなければ時期の変更は強制できない、ということです。

杉田氏:
次に、外国人を雇用する受入れ企業の要件についてです。一点、扱いが難しいのは、「外国人が就労予定の業務について離職者を出していないこと」という内容です。
一定の場合を除いて、離職者を出してはいけない。もし離職者を出してしまえば、1年間は特定技能人材を雇用できず、現在在籍している人材も継続して雇用できない、というかなり厳しい内容になっています。個人的には合理的ではなく、変更された方がいいと考えています。しかし、現行制度だけでなく、新たに導入される育成就労制度でも、この内容は含まれています。
定年退職、雇用保険法の重責解雇、理由のある雇い止め、自己都合。この4つのケース以外に該当する場合、たとえば普通解雇をしてしまうと、1年間の受け入れ停止になってしまいます。注意が必要なのは、外国人だけでなく、日本人も対象である、ということです。特定技能人材と同じ仕事をする日本人の方を普通解雇しても、該当します。

杉田氏:
続いて、生活支援についてです。特定技能制度で行う支援は10項目です。
事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談苦情対応、定期面談などは基本的には外国人の理解できる言語であることが求められます。厳密には母国語に限りませんが、母国になることが多いです。
こういった対応を行えるようであれば、自社で支援をしていただく。難しい場合は、登録支援機関に委託していただく形になります。
自社支援については、ハードルは高いといえば、高いです。たとえば、空港への送迎について。入国する空港への送迎が必要なので、北海道で就業予定の特定技能人材を迎えに行かなければならないのは、新千歳空港ではなく、成田空港となる、といった状況になります。送迎の時間帯が早朝や深夜になるケースもあり、自社支援をすると社員の負担や不満が増えることもあります。そういう意味では、まず登録支援機関に委託する企業が多いのかな、という印象はあります。

杉田氏:
特定技能2号についても触れていきます。特定技能2号評価試験へ合格し、宿泊業界の実務経験が2年以上あれば、取得することができます。
「特定技能雇用契約」で守らなければいけない内容は同じです。生活支援については、行う義務がなくなり、あくまで任意になります。もし将来的に特定技能2号の取得を想定しているのであれば、特定技能1号として採用するときに、「住宅の手配については、最初の5年間は支援しますが、その後はなくなります」とあらかじめ人材側に伝えておいた方がいいと思われます。
担当できる業務については、基本的に1号と変わりありませんが、「複数の従業員を指導しながら」という内容が含まれます。また、雇用の上限期間はなくなり、家族滞在も可能になります。
次は、特定技能制度の注意点について、2点ほどありますので、解説します。
一点目は、「フライングの禁止」です。技人国と異なり、特定技能ではパスポートに就業先の法人名を記載する必要があります。転職する際には、在留資格変更許可という法人名を変える手続きをしなくてはなりません。変更される前に転職先での就業をスタートさせてしまうと、不法就労となります。
二点目は、「届出関連」です。定期届出と随時届出がありますが、定期届出は年1回になり、負担は減ったと思います。随時届出は、労働条件の変更などがあった場合に14日以内に提出しなければなりません。労働条件の変更などは、登録支援機関は企業から教えてもらわないと気づきませんから、そのあたりも共有しながら対応していかなければいけません。

杉田氏:
ここからは、「国外にわたる職業紹介」について、触れていきたいと思います。技人国でも特定技能でも適応される条文は同じです。
「国外にわたる職業紹介」に該当するかどうかは、人材の国籍ではなく「人材がどこにいるか」で考えます。ですから…
(※以降の内容については、是非アーカイブ動画をご覧ください。)
菅井氏:
日本の大学の経済学部や国際学部を卒業見込みの外国人留学生の採用を検討しています。「特定技能(宿泊)」「技人国」「特定活動46号」いずれかの在留資格で、ホテル・旅館のフロント業務職(正社員)として、採用は可能でしょうか。
杉田氏:
いずれの在留資格も問題ありません。なお、特定技能の在留期間は最大5年ですが、正社員として無期雇用することは可能です。在留期間と雇用期間はまったく連動しておりません。ただ、その場合は修業規則に自然退職事由として、「在留可能な在留資格を失ったら、雇用を終了します」といった内容を加えるなどの対応が必要です。ですから、特定技能1号のときは有期雇用で採用して、2号に移行したときに無期雇用に転換するのが合理的ではないかな、と思います。
菅井氏:
技人国の外国人スタッフが、日本語がわからないお客様のために、送迎業務(車の運転)を担当してもいいですか?
杉田氏:
恒常的・日常的に役割として行うのは在留資格外であり不可です。OJT期間中や、フロント業務中に急遽対応する突発的な場合に限り許容されます。
菅井氏:
外国籍人材には特定技能2号を取得してほしいと考えています。企業としてどのようなサポートができますか?
杉田氏:
まずは、モチベーション面でのサポートが大切なのではないでしょうか。「2号を取得したら、こういう待遇に変わります」ということを示してあげるということです。あとは、試験の問題文が読めるように日本語学習の環境を整えてあげたり、受験資格に必要な実務経験を積めるようなポジションを与えることではないでしょうか。
(※以降の質疑応答については、是非アーカイブ動画をご覧ください。)
▼ アーカイブ動画は無料です ▼
菅井氏:
それでは本セミナーを終了させていただきます。改めて杉田先生、本日は貴重なお話ありがとうございました。
杉田氏:
どうもありがとうございました。
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