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外国人労働者による『訪問介護』が「技能実習」や「特定技能」で解禁! 介護現場の未来を支える新たな選択肢を解説

これまで訪問介護分野において、外国籍人材の活用は在留資格「介護」やEPA(介護福祉士候補者)による受入れが認められていました。これらの制度を通じて、一定の条件を満たした外国籍介護人材が訪問介護に従事することは可能でしたが、対象は限られており、広く普及しているとは言い難い状況でした。

一方で、「技能実習」や「特定技能」といった在留資格では、これまで訪問介護への従事は認められていませんでした。しかし、2025年4月の制度改正により、これらの制度を活用した外国籍人材も訪問介護に従事できるようになり、介護業界の人材確保に新たな選択肢が加わりました。

本コラムでは、この制度改正の背景から、訪問介護における外国籍人材の受け入れ条件、対象サービス、事業所が遵守すべき事項まで、わかりやすく一から解説していきます。

制度改正の背景

2025年4月に、外国籍介護人材による訪問介護への従事に関して、規制緩和が行われました。その背景には、訪問介護分野における深刻な人材不足と高齢化の進行があります。

令和5年度の「介護労働実態調査」によると、訪問介護事業所の80%以上が人手不足を感じていると回答しており、現場の負担は年々増加しています。また、訪問介護員(ヘルパー)の平均年齢は54.4歳、65歳以上の職員が24.4%を占めており、業界全体の高齢化も顕著です。

さらに、人材不足と高齢化の影響により、訪問介護事業所の廃止件数も増加傾向にあります。2023年3月から2024年3月の1年間で、廃止事業所数は前年比で約40件増加しており、地域の介護サービス提供体制にも影響を及ぼしています。こうした状況を打開するため、政府は一定の条件下のもと特定技能外国籍人材や技能実習生の訪問介護への従事を認めることで、介護現場の持続可能性を高める新たな一手を打ち出しました。

(参考)厚生労働省|外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について
(参考)令和5年度 介護労働実態調査 結果概要(PDF)

訪問介護に従事できる4つの在留資格

2025年4月の制度改正により、以下の4つの在留資格を持つ外国籍人材が、訪問介護を含む介護業務に従事できるようになりました。

EPA(介護福祉士候補者)

EPAは経済連携協定に基づき、日本と特定の国との間で人材交流を促進するための在留資格です。この制度は、介護福祉士候補者として受け入れ、実務経験を積みながら「介護福祉士」の資格取得を目指すことを目的としています。日本ではインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国からの受け入れを行っております。

介護

日本の国家資格である「介護福祉士」を持った外国人材が日本で介護や介護指導を行うための在留資格が「介護」です。

特定技能1号

特定技能は、介護分野で即戦力として働ける外国籍人材を対象としており、日本の深刻な人手不足を補うことを目的としています。介護業界における特定技能1号は、介護分野における一般的な業務を行うことができ、資格を取得するためには、介護の知識や技能を証明する試験に合格する必要があります。

技能実習

技能実習制度は、日本の技能や知識を母国の発展に役立てる事を目的とした制度です。
技能実習生は、日本の介護現場で一定期間働きながら技術を学び、最終的には母国へ帰国することになります。

※介護業界に関する在留資格については、過去コラムにまとめておりますので、こちらも一読いただけますと幸いです。

訪問介護における外国籍人材受入れのメリットと課題

受入れのメリット

若年層の人材確保

特定技能や技能実習の外国籍人材は比較的若い世代が多く、平均年齢が高い訪問介護業界にとっては、若年層の人材を確保できる貴重な機会となります。

一定水準のスキルと知識

特定技能の外国籍人材は「介護職員初任者研修」などを修了し、技能評価試験に合格しているため、一定の技術と知識を備えています。即戦力としての期待も高まります。

訪問先の拡大

今回の制度改正により、訪問介護事業所が雇用する特定技能の外国籍人材は、「サービス付き高齢者向け住宅」や「住宅型有料老人ホーム」への訪問が可能となりました。ただし、これらの施設が外国籍人材を直接雇用することは引き続き認められていません。

受入れの課題

手続きの煩雑さと準備期間

通常の特定技能に関する書類に加え、訪問介護に特化した追加書類(キャリアアップ計画書、適合確認申請など)の提出が必要となり、準備に時間と労力がかかります。

コミュニケーションの壁

言語や文化の違いから、日本人介護職員とは異なるコミュニケーションスタイルを持つ外国人職員も多く、利用者との信頼関係構築には工夫が求められます。

OJTや研修体制の整備

受け入れ事業所には、外国人職員に対するOJTや研修の実施、業務説明、ハラスメント対策など、きめ細かな支援体制の構築が求められます。

対象となる訪問系サービスや施設

2025年の制度改正により、外国籍介護人材が従事できる訪問系サービスは以下の通りです。これらは、介護保険法や障害者総合支援法などに基づいて提供されるサービスであり、一定の条件を満たす事業所・施設が対象となります。

訪問系サービス(介護保険・総合事業)

訪問介護
訪問入浴介護
夜間対応型訪問介護
介護予防訪問入浴介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
訪問型サービス(総合事業)

障害福祉サービス(障害者総合支援法)

居宅介護
重度訪問介護
同行援護
行動援護
重度障害者等包括支援
居宅訪問型児童発達支援
移動支援事業(地域生活支援事業)

対象となる施設・事業所

・上記サービスを提供する訪問介護事業所
・小規模多機能型居宅介護(訪問サービスを含む)
・障害者支援施設(居宅介護等を提供する場合)
・児童福祉施設(障害児支援を含む場合)

特定技能の外国籍人材が訪問介護に従事するための要件

訪問介護に従事するには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

在留資格の取得

「特定技能(介護分野)」の在留資格を持っていること

日本語能力

JLPT(日本語能力試験)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストの合格

介護研修の修了

介護職員初任者研修課程などを修了していること

実務経験

介護事業所での実務経験が1年以上あること

技能実習生が訪問介護に従事するための要件

実務経験

介護事業所等での実務経験が原則1年以上あること

研修の受講

訪問介護の基本事項に関する研修を事前に受講していること

OJTの実施

一定期間、責任者等が同行し、実地訓練を行う体制があること

意向確認と計画

業務内容の丁寧な説明と、本人の意向を踏まえたキャリアアップ計画の作成

環境整備

ハラスメント対策やICT機器の活用など、安心して働ける環境の整備

追加要件:適合確認書の取得

技能実習生を訪問介護に従事させるには、上記の要件に加えて、巡回訪問等実施機関(例:国際厚生事業団)から「適合確認書」の交付を受ける必要があります。これは、事業所が制度に基づく遵守事項を満たしていることを第三者機関が確認する仕組みです 

(参考)介護技能実習生の訪問系サービスへの従事に係る概要・関係法令等 - 【介護技能実習】訪問系サービス巡回訪問等実施機関

受入れ事業所が遵守すべき5つの事項

訪問介護に外国籍介護人材を受け入れる事業所は、以下の5つの事項を適切に実施することが求められます。

研修の実施

訪問介護の基本業務やルールを理解するための事前研修を行うこと

OJTの実施

一定期間、同行訪問などを通じて実地で業務を学ばせる体制を整えること

業務説明と意向確認

業務内容を丁寧に説明し、本人の希望や適性を踏まえたキャリアアップ計画を作成すること

ハラスメント対策

外国人職員が安心して働けるよう、相談窓口の設置や職場環境の整備を行うこと

ICT活用などの環境整備

緊急時対応や業務支援のために、ICT機器や連絡体制を整備すること

これらの対応は、外国籍介護人材の定着と安心・安全なサービス提供のために不可欠です。
厚生労働省も、これらの事項を制度運用上の「遵守事項」として明示しています。

(参考)厚生労働省|外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について

まとめ

訪問介護の現場では、少子高齢化の進行に伴い、今後さらに人材不足が深刻化することが予想されています。特に、利用者の自宅で支援を行う訪問介護は、身体的・精神的な負担が大きく、担い手の確保が難しい分野です。

こうした課題に対して、外国籍介護人材の受入れは、単なる労働力の補填ではなく、介護現場に新しい価値と可能性をもたらす選択肢です。多様な文化背景を持つ人材が加わることで、利用者との関係性が広がり、ケアの質や視点も豊かになります。

もちろん、言語や文化の違い、受入れ体制の整備など、乗り越えるべき課題もあります。しかし、それらを丁寧に対応することで、外国籍介護人材は地域に根ざした「仲間」として、長期的に活躍することができます。

 

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